徳川家広氏の著作「自分を守る経済学」が出ていたため、読んでみました。
2012年末から2016年初頭に日本経済が回復過程を歩むと同氏は著作で述べており、私の見解と一致しています。2012年末から2015年前後までの中期循環上昇局面については、ほぼエコノミスト、経済予測家の間で同一の見解が醸成されています。
注目すべきは、同氏が2016年半ばから2018年初めにかけて日本国債危機が起こることを断言していることです。
 歴史をひもとけば預金封鎖と新円切替が行なわれたのは、1946年2月17日でした。一定期間中のみ銀行窓口が旧円を新円に交換するため、旧円がただの紙となる前に国民は銀行に旧円を預けました。集まった預金は封鎖され、毎月の払い出しを生活費相当の一定額以内と制限されました。このような政策は日本国憲法下では財産権の侵害ですから今後実行に移されることはないにせよ、現下の日本でハイパーインフレは避けられない状況です。
 金価格(田中貴金属のHPより取得。)の推移を見てみますと、終戦の1945年に1グラム当たり4.8円だったものが、1946年には17円になり、1947円には150円(2年前の31倍)まで暴騰しています。一方、1945年以前の金価格の推移を見ますと、大戦恐慌のボトムとなった1930年の1.36円からじわりじわりと上がり始め、1945年にはおよそ3.5倍になっています。
 この状況を現在にあてはめるとどうなるでしょうか。2000年に1014円でボトムをうった金の年平均価格は、2010年には3477円まで3.4倍になっています。
 
 今まで私は、2010年代も金利は1%台に収まり国債危機は2020年代まで先送りされるだろうという楽観的な観測を持っていましたが、どうやら甘かったようです。
金価格の推移、政府債務残高の対GDP比からみれば1945年と現在は似たような状況にあります。おそらく、2012年からの景気回復局面が2015年前後にピークを打ち、金利が3%を超えてきた段階で政府債務が制御不能に陥るのではないでしょうか。
 
 そこで、徳川家弘氏は2016年頭に金を買うことを推奨しています。次に示す最上図は、株の金に対する超過収益率の推移ですが、預金封鎖が実施された1946年とその翌年で大きくマイナスとなっています。上から二段目の図は、1921年からの金価と株価の推移です。国家破産が資産形成のタイムスパン中に入ってくると、必ずしも株が有利な投資先でないことがわかります。次に、上から三段目の図を見ればわかるとおり、預金封鎖によるハイパーインフレを経験した後では、株価が金価をアウトパフォームしています。
最後に示す最下段の図ですが、これは金価格の長期推移を表したものです。現在の金価格上昇は、コンドラチェフ循環に沿った動きであり、今後も20年以上にわたり上昇が続いていくことが読み取れるでしょう。

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(2015.7.19追記)

 ここで、改めて徳川家広先生の本から引用します。

-以下引用-

 インフレの時には株価も上昇します。ですが、株以上に有利なのが、金です。というのも、不況の時に相場が暴落しているであろう金は、その後のバブル期にも、一貫して値段を下げ続けているからです。

 金が輝きを増すのは、国家の信用がもとになって流通している紙幣の価値が怪しくなる時です。そしてそれは、インフレが高進するときに他なりません。インフレがある程度まで進みますと、円建ての資産はすべて価値を失い始めます。ただし、2010年代も後半となりますと、。ドルもユーロも、その価値は本当に疑わしくなっています。
 日本がインフレに突入した場合、日本からの投資と日本による輸入に依存して、しかも政府債務が莫大なアメリカは、日本と仲良くインフレに陥る道を選ぶでしょう。

 今回のインフレは、日本の国家財政の破たんの一部として起こるものです。一千兆円以上の発行残高のある国債が紙くずになるのが、終着点です。ですから、インフレも相当な水準のものになるでしょう。2018年の初期の段階で、円でもって金を買おうとすると、2016年の頭の値段の10倍になっていても、おかしくありません。

-引用終わり-




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上記のグラフをご確認ください。政府債務の対GDP比残高が増大するにつれて、金価格も上昇しています。





自分を守る経済学 (ちくま新書)
徳川 家広
筑摩書房
2010-12-08