下記グラフの赤線、橙線は日本のボーナス人口と株価の推移、青緑線、緑線はギリシャのそれである。グラフは比較しやすいように主に最大値を100(ギリシャの株価は50)として調整してある。
 ギリシャはボーナス人口が急増しているときにデフォルトが起きている。新興国ではこのようなことはよくあるため、経済成長を阻害する社会的要素を見抜く必要がある。ギリシャの場合は経常収支赤字国であり、基盤となる産業が観光程度しかないため、投資するにあたっては危険な国である。元々、バルカン半島は政情不安定であり、マクロ経済指標から国際競争力のある産業を有しているかどうか考える必要がある。


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 そこで、新興国の経常収支を見てみよう。近年赤字が拡大した国は、イタリア、スペイン、ギリシャである。これらの国々は、競争力の低下から債務危機を招いた。
 また、90年代を通じて赤字国だったインド、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった国々は、タイバーツの暴落をきっかけにアジア金融危機を招いた。経常赤字は通貨安を招き、それをきっかけに対外債務の増加が債務危機を引き起こす要因となる。投資すべきは、経常黒字国である。また、日本から投資するのであれば、対日貿易で黒字となっている成長国が望ましい。
 2000年代に入り、定着しなかったもののインドが戦後初めて黒字化を達成した。フィリピン、インドネシアは継続的な黒字化に成功した。債務危機を経験したアルゼンチンも切り下げた自国通貨の恩恵により定常的に黒字化した。インドは、原油輸入が増加して赤字幅が拡大しているものの、国際収支の損失を内需の拡大が相殺し、経済成長を続けている。
 対日輸出の点からみても、ベトナムは赤字幅が増加したものの、 フィリピン、インドネシアは継続的な対日貿易の黒字化に成功している。 
 今後の投資対象国としては、アルゼンチン、フィリピン、インドネシアは有望である。



国際収支





自分を守る経済学 (ちくま新書)
徳川 家広
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2010-12-08

ドル暴落から、世界不況が始まる
リチャード・ダンカン
日本経済新聞社
2004-08-26