よく割安な株を買いなさいと言うが、それは嘘である。PERというものは所詮は、一株あたり利益と株価の関係性を示すものでしかない。
 利益が現在出ているからといって将来も高い利益が出る保証はないし、株価が割安だからといって将来も株価が上がり続けるわけはない。
 PERが高いときには、株価が利益にたいして過大に成長しており、バブル状態であるため株を購入してはいけないという。下記に株式会社エンプラスの通期会社予想EPS、通期会社予想EPS発表月の月末時点株価、この二変数をデフレートしたPERを示す。2000年のITバブルのときは典型的なこのバブル状態であるが、バブルがはじけて株価が下がり続けてもPERは160倍まで上がり続けたのである。
 一方、そのあとにPERは20倍を切るまで下がり続ける。これは、会社予想利益の上昇に対して株価が鈍感であり利益成長ほどに上昇しなかったたためである。
 つまり結果と因果が逆なのである。株価が利益に対して過大評価される過程にある中でPERが高まり続けるのであり、利益に対して株価が過少評価される過程にある中でPERが低下し続けるのである。
 結局すべては、停滞経済においてはサイクルタイミングが最も重要な意味を持つのであり、ファンダメンタルズによる割安性の判断というのは、まったく無意味であると言える。
 PERが極端に高くなっていても更に株価が過大評価され上昇するかもしれないし、PERが極端に低くなっていても株価が過小評価されさらに低下するかもしれないのである。
 ただこのエンプラスの株価の経験を通じていえることは、ジュグラーサイクルの低下局面においては否応なしに利益が落ちてくるために株価が過大評価されており、上昇局面においては否応なしに利益が膨らむため株価が過小評価されているということである。
 エンプラスは今回歴史的な株価の上昇とPERの低下が起きている。これは、ジュグラーサイクルが上昇局面に入ったために否応なしに利益が膨らみ株価が過小評価されているということである。そしてこの過小評価の状態はジュグラーサイクルが転換局面に入るまで続くのである。そして前回のジュグラーサイクルのピークを見ればわかるとおり、PERが20倍を切って最も割安になった段階で転換局面に入り、利益ががくんと落ち込んできて、PERが160倍を突破するまで上昇していくのである。この転換点において、PERが割安であるという理由で株を購入すれば悲惨なものであり、そこから投資家は奈落の底に落ちて消えていくのであるが、この重要な事実を知らせる証券会社や投資本はどこにもないのである。

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